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【小説技法】恋愛ジャンルに対する男としての見解

 恋愛ジャンル。
 源氏物語から始める最も古いジャンルであろうし、あらゆる神話や昔話にもそういう要素は必ずあると思う。
 そういう意味で、このジャンルの必要性、重要性はよくわかっているのだが、ここで男の端くれとして敢えて言わせてもらいたい。

 男と女、そこにはどうしても埋めがたい溝がある。
 体型、生物としての役割、そして考え方。
 僕は恋愛ジャンルにこそ、男女の考え方の完全な違いが表れていると思う。

 どういうことか。
 恋愛ジャンルでいうところのクライマックスは、大抵、二人の男女が障壁を乗り越えてついに一緒になる。ハッピーエンドはそのとおりであろうし、悲しい結末であったとしても、心は一緒になる、まあそういうことなんだろう。

 だが、そこに男は完全に共感できない。
 そのクライマックスの一つであろう、SEXを考えてみよう。
 もともと男は女性と付き合おうとするときに、どうしてもSEXも頭に思い浮かべてしまう。
 そして運よくつきあって、SEXしたとする。
 その直後、男が何を思うか。
 よく賢者タイムなどと言われるが、そんなかっこいいものではない。
 それまでの感情が嘘であったかのように物凄く、頭が冷める。
 おそらくこの感覚は絶対に女性には分からないと思し、知らない方がいいと思う。

 じゃあ、男には恋愛はないのかというかもしれないが、それはある。
 それはSEXを越えたところにある。日常の中のちょっとした心遣い、ちょっとしたしぐさ、何気ない会話、労りの言葉、そうしたところで男は女性に愛情を感じる。
 こいつが好きだと感じる、こいつを守りたいと感じる。

 それじゃ男が最も共感できる恋愛要素とは一体、何か。
 それは誰もが知っている二つの映画に答えがある。
 「男はつらいよ」と「釣りバカ日誌」。
 この二つはまさに国民的な映画で、皆さんも、ちょっとぐらいは見たことがあるかもしれない。いったいなぜ、これがこんなに人気があるのか?

 それは「男はつらいよ」の寅さんに、ほとんどすべての男が共感するからである。
 「釣りバカ日誌」の浜ちゃんに、圧倒的多数の男たちがそうそうと頷くからである。

「男はつらいよ」の寅さん。
 毎回、いろんなところでマドンナに出会い、恋をする。
 だが大抵、そのマドンナには別に好きな人がいる。 
 寅さんはいつも振られる役柄だ。そして、そんな自分の気持ちを押し殺して、あえてその恋を応援する。
 まさに、男はつらいよだ。

 男は全員失恋する。
 失恋したことがないという男もいるが、そういう男は考え違いをしている。
 そういう男は、絶対大丈夫というところまでいかないと女性を口説きにいかない。
 逆の意味でいけば、絶対に自分が落とせない時点で、その女性に恋することをあきらめる。
 それは女性に振られたと同じことなのだ。
 だから男たちは、女性に振られる寅さんに物凄く共感する。
 自分の人生を思い返し、ああ、あの時はつらかったなと振り返り、そんな自分を寅さんに重ね合わせる。

「釣りバカ日誌」の浜ちゃん。
 男ははっきりいっていつまでたっても子どもみたいなものだ。
 おそらく何歳になっても、自分の好きなことになると、女性からみたら馬鹿じゃないと思うくらい、そのことに熱中する。
 浜ちゃんはまさにそれを体現している。
 仕事よりも、自分の好きな生き方を優先する。
 そして、そんな浜ちゃんの隣にみち子さんがいる。
 このみち子さんがまたいい。
 みち子さんは浜ちゃんが好き勝手に釣りに行くのをとがめたりしない。
 帰ってくれば優しく迎えてくれる。
 だから浜ちゃんもみち子さんが大好きで、大抵、映画の中でも合体とかいって、ラブラブなところをちゃんと提示する。
 これこそが男にとっての最高の幸せであり、最高の恋愛の形なのだ。

 男にとって恋愛は憧憬であるが、苦みでもある。だからもちろん男も恋愛を追い求めるが、恋愛だけでは生きられない。
 だからこそ、恋愛の成就だけで話が終わる恋愛ジャンルに、完全に共感できない。
 男にとって、恋愛は点ではない。その後も長く続く線なのだ。
 結婚式で、大抵、目上の男性は祝いの言葉として新郎新婦にこんなことを言う。
「結婚は時には我慢も必要だよ」と。
 キリスト教ではこういう。
「病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻(夫)として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」と。
 つきあってから、結婚してから本当の試練が始まるのだ。

 思い返すと、僕もたくさんの人に振られ、何人かの人と付き合い、そして、今、結婚して娘がいる。
 そして今、嫁さんも娘も寝ているのに、こんな朝っぱらに一人起きてきてこんなことを書いている。
 だが、意外とこんなことが、幸せなのかなと感じる。
 昔を思い返すこともあるが、いまさらその女性たちと会いたいとも思わない。
 まあ、これくらいがちょうどいいのかなと感じる。
 それが僕が最終的に感じる恋愛に対する一つの答えだ。

 

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