「着いたよ」
「うわ~! なんか、小さいコテージがたくさんあって、小さな町みたいですね。あっ、でも、車あります。結構、埋まっているんですね~」
「こんな真昼間からラブホテルを使っている連中は、まあほとんど、イケナイ関係の男女たちだろうね。おそらくは営業行ってきますなどと言って、得意先の顧客とランデブーしてるか、夫の留守をいいことに人妻がひと時のアバンチュールを楽しみにきているのだろう……おっと、噂をすればなんとやらだ。今、出てきた男女は僕たちの車を見た瞬間、咄嗟に顔を隠したよ。明らかに身にやましい証拠だよ」
「……って、博士も顔下げてますけど」
「そういう君も僕の方を向いて、うまく顔を隠しているじゃないか」
「……」
「……白鳥君、何も気に病むことはない。これは大人のマナーというものだよ。別に君と僕がそういう関係だからって、世間に堂々と公表する必要はないだろ」
「私と博士は、そういう関係じゃありません!」
「ふふふ白鳥君、君の想像力のベクトルは確実にエロに向き始めているね」
「博士と話していると、それ以外の方向に向きようがないんです!」
「まあいい、一番奥のデラックスが空いているようだから、さっそく入ろうじゃないか」
「部屋によっていろいろ違うんですか?」
「あたりまだろ、カラオケと同じようなもんだよ。高い部屋ほど選べるオプションは多いし、内装もゴージャスだ。さあ、降りたまえ」
「あっ、はい」
「――しかし、毎回思うんだが、このいかにも家に帰ってきたみたいな、この玄関の感じは、どうにかならんのかね。まあいきなり、おかえり! なんて出てこられても困るんだが」
「ほんとですね。なんか、アパートに帰ってきたみたいですね」
「――えっと、電気はと――あった。さあ、白鳥君、見たまえ! ここが大人の遊園地だ!」
「うわあああ、すごい! ホテルのスイートみたいじゃないですか」
「びっくりするのはまだ早いよ。このリモコンを押すとだね……ほら、見たまえ!」
「うわっ、天井が開いて、鏡になったあ!」
「で、こっちのボタンを押すとだね……」
「あっ、いきなりプラネタリウムになった!」
「こっちのボタンは何かな?」
「ええっ、ベッドが回りだしましたよ!」
「おお、ここはまだ回転ベッド機能が残っていたか。これは昔一世を風靡したシステムだったがね。最近ではとんと見なくなったよ」
「でもなんか、想像してたよりは、結構、面白いです」
「だろ――だがね、こうすると、一気に雰囲気が変わるんだよ」
「――うわっ、照明も調整できるんですか」
「あたりまえだろ。これで少し、赤みを強くすれば……ほら、どうだね、白鳥君」
「なんか、ちょっとエッチな感じです」
「これくらいがちょうどいいんだよ。ほら、ここに座りなさい」
「は、はい……」
「どうして、そんなに離れるんだ。もっと近くにきなさい。ほら」
「あっ、博士、そんなに引っ張ったら……」
「白鳥君……」
「……博士……」