「白鳥君……」
「……こうして、君を抱きしめているだけで、僕は例えようもなく幸せだよ」
「うれしい……私も幸せです」
「白鳥君、僕の胸に手をあててごらんーーほら、僕の心臓の鼓動が聞こえるかい?」
「はい、博士の心臓が、とくんとくんと鳴っているのが私に伝わってきます――あっ、そんなところに手を入れちゃ……」
「ああ、やっぱりだ、白鳥君、君の心臓も早鐘のように鳴っているよ」
「……恥ずかしい」
「何が、恥ずかしいんだ。それにしても、君は着やせするタイプなんだね。こんなに、胸が大きかったなんだね。これは、Dカップかい」
「もう、博士ったら……そうです」
「やっぱりね――でも、この張りのある形のいいおっぱい……おや、白鳥君、もう乳首がこんなに固くなっているじゃないか。ブラジャー越しにもはっきりわかるよ」
「博士が、そんなに優しく触るからです……」
「白鳥君、もう、我慢できない! さあ、ベッドに行こう」
「……博士……その前に……私、シャワーを浴びたいです」
「シャワーなど浴びなくていいよ」
「だって、ちゃんと洗わないと汚いし……恥ずかしいです」
「君のどこが汚いと言うんだね。僕にとっては君の汗や匂いすら宝物だよ。もう、しゃぶりつきたいくらいだ」
「お願い、博士……」
「……分かったよ。行っておいで」
「はい……入ってきちゃだめですよ」
「そんな子どもみたいなことはしないよ。安心していっておいで」
「すぐ済みますから、待っててね」
「楽しみにしてるよ――ああ、なんて可愛いんだ……まさに、あの小説を思い出すよ。カクヨムにバンされたあの小説を――本当に好きな人とするSEXがどれほど幸福で官能的であるか……今でも諳んじて言えるほどだ。そう、あれはこんな出だしだった……
――俺がSEXという言葉とそれが意味することを知ったのは、いつのことだったろう。
たぶん、中学一年の時だったと思う。それは、ある日唐突に体の中に生まれ、それ以来、ずっと体の中に棲みつづけてきた。
10代のころは、SEXという言葉が四六時中頭にちらついていた。いや、とり憑かれていたといっても言い過ぎじゃない。俺の中では女性とはSEXそのものだった。
胸が膨らんだ女生徒を見るだけで、その制服の下の裸体が頭にちらついた。短いスカートの中の足の付け根の先に何が隠されているのか想像するだけで、下半身が熱くなっていった。
誰と誰が付き合っているとか、初キッスがどうとか、初めてセックスしたとか、友達がそんな卑猥な話を始めると、俄然、前のめりになり、まるで我がことのように熱心にその話を聞いた――
……懐かしいよ、あの時代が。
宝は見つからないからこそ、男の情熱を掻き立てる。宝を見つけてしまったら、男は情熱を失ってしまう。白鳥君を抱いてしまったら、この気持ちがどこかに行ってしまわないだろうか。あの頃のように……」