リュウは、メキドに向かう街道をリオラとレオンとともに歩いていた。
「リオラさん、調子はどうです。大丈夫ですか?」レオンが並んで歩いているリオラを心配そうに見つめた。
「レオン、私は大丈夫よ。それに、家の中にいるより、こうして自然の中を歩いている方がとても、気持ちいいわ」
その言葉通り、リオラは至極元気そうであった。
「それにね、リュウやあなたとこうやって歩いていると、なんだかほっとするんだ。なんでだろうね」リオラはそう言って、レオンに笑いかけた。
後ろで二人がそんな会話をしているのを聞きながらリュウは、小さく微笑んだ。
「リュウさん、知ってますか? リオラさんが作る紅茶はとても美味しんですよ。リオラさん、リュウに自分の作った紅茶を飲ませるんだって、わざわざ、茶葉をパックに詰めてきてくれたんですよ」
「そうだよ、リュウ、あなた私が淹れた紅茶を飲んだことないでしょう。レオンもルークもみんな美味しいって言ってくれたんだから、きっとあなたも気に入るはずよ」
リュウは後ろを振り返ると、からかう様に言った。
「そんな美味しいお茶ならぜひ飲んでみてえな。どうせならついでに、美味いシチューも食ってみてえもんだな」
「あら、リュウ、私、シチューも得意なのよ。そんなに言うなら、今日はシチューを作ってあげるわ。食べたら、絶対にお代わりしたくなるからね、楽しみにしてるんだよ!」
リュウは、リオラが得意そうにそう言うのを聞いて、かつてレインハルトとともに旅した日々を思い出していた。
お前がつくる紅茶もシチューも最高に美味いってことぐらい、とっくに知ってるよ。なあ、レインハルト……
レインハルトとリオラと旅したかつての記憶。それはリュウにとってかけがえのない記憶だった。人は決して一人じゃないんだと初めて知った旅だった。リュウの心にこれまでなかったものを与えてくれた旅だった。今再び、リュウは旅をしている。レインハルトはいないが、その代わりに、レインハルトによって新たな命を吹き込まれたものたちとともに。レインハルトはきっと自分たちの旅路を祝福してくれるだろう、リュウはそんな思いを胸に、空に向かって小さく微笑んだ。
三人が仲良くしゃべりながら歩く、その後ろを二人の男女が歩いていた。
老婆と壮年の男で、どうやら親子らしい風体だが、その割になんの会話もなく、互いに厳しい顔つきでひたすら前を向いて歩いていた。
もし、リオラに記憶があれば、その老婆を見逃すことはなかったであろう。その老婆は、マナハイムの城門の外で、リオラを欺き、誘拐させたあの老婆であった。
