アマチュア作家の成り上がり執筆録

素人作家がどこまで高みに昇ることができるのか

【小説の書き方について考える】小説技法 ~謎の提起 その2~

 謎にはいろいろなものがある。
 人間ドラマにおける、あるキャラクターの秘められた過去。
 殺人ミステリーにおけるトリック。
 ホラーミステリーなどの正体不明の存在。
 こんな感じであらゆるジャンルでいろいろな謎が考えられるが、僕が好むのは現実とリンクした謎だ。
 何それ? って人もいるだろうから、例を言った方が早いと思う。

 例えばダン・ブラウンの『ダヴィンチ・コード』。
 あれはキリスト教に秘められたある仮説がベースとなったミステリーだ。
 それに作者のオリジナルの推論を加えて、壮大なミステリーに仕上げている。
 ああいうのが大好きなのだ。

 だいぶ前だが、『神々の指紋』というノンフィクションが世界中でベストセラーになったことがある。
 その出だしは一枚の地図のミステリーから始まる。
 その地図は16世紀に書かれた地図であるにも関わらず、南極の海岸線が極めて正確に書かれているのだ。
 それだけなら実は既に誰かが南極に行ったことがあるんだろうと思うだけかもしれない。

 だがこの地図の本当のミステリーは、南極大陸は一千万年以上前に氷に閉ざされてしまっているのに、なぜ正確な海岸線を書けたのかということなのだ。
 こういう謎が僕の知的好奇心を思いっきり揺さぶってくれるのだ。

 

引用:『ピーリー・レイースの地図』(wikipedia)

 

 もちろん謎は独自に作っても構わない。
 例えば、トールキンの『指輪物語』では「一つの指輪」という存在(謎)を物語の核心に据えた。
 ファンタジーの場合は、もともと仮想世界を舞台にするので、そういうのも全然ありだと思う。

 ただ僕はこの世界とどこかでリンクする物語を書きたいという欲求がある。
 例えば僕が書いている長編は、聖書に出てくる怪物リバイアサンを物語の核心とし、リバイアサンとは一体何かということを大いなる謎に仕立てている。

 僕はこうした謎を好む理由はもう一つある。実はこういう謎って、一から十まで自分で謎を作るよりもとても効果的なのだ。
 なぜかというと、その謎というかその存在を人は既に認知しており、勝手に想像を膨らませてくれるからだ。
 中世ヨーロッパで聖杯をモチーフにした物語が続々と生まれたのも、聖杯という謎の存在を人々が好んだ(受け入れた)からに他ならない。それは聖杯物語というジャンルにまでなった。

 人は謎を好む。
 そして、その謎は新たな謎を産む。
 その連鎖が人間の知的好奇心をかきたてるのだ。
 NASAが火星の地表を撮影した写真の中に、人間の顔の形をした岩があるということで大いに盛り上がったことがあった。
 もしかしたら、火星には知的生命体がいるのかも!
 火星人がいるかも!
 この宇宙には、生命が溢れているんじゃないか!

 

引用:『火星の人面岩』(wikipedia)

 

 人間はそういうものを好むのだ。
 だが、その謎が完全に作家が作り上げたフィクションの中だけのものだとしたら、その謎は膨らみようがない。
 謎を上手に使う人は、その謎がこの現実世界においてもありえるかもしれないという暗示を与えるものだ。

 物語の中に仕掛けられた謎。
 いい物語にはいい謎が必ずあると僕は思っている。

 

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