アマチュア作家の面白い小説ブログ

素人作家がどこまで面白い小説を書くことができるか

面白い小説を書くことしか考えていません

 このブログは、面白い小説を書くことしか考えていないアマチュア作家の徒然ブログです。

 作家を目指そうとした時期もありましたが、大きな仕事を抱える立場になり、現実の社会を直接的に変えることの方が自分の性にあっていると感じたため、小説を書くことはあくまでも趣味として捉えています。

 ただ、自分が書いた物語を発表する場と自分の心に溜まったことを吐き出す場所が欲しいため、このブログを立ち上げました。

 これまでに書いた物語、これから紡がれる物語、それらを順次発表していきたいと思いますので、初めての方も、いつもお読みいただいている方も、どうぞ、お気軽にお読みください。

 

 

 

 

短編

 

『42.195㎞』

 

ジャンル

 ヒューマンドラマ

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 マラソンは、人生に似ている

紹介文

 俺は今年で34歳になる独身会社員。夢も希望のなく、ただその日その日を繰り返す日々。このままいったら、ほんとにこれで人生終わりなんじゃないか。 なんでもいいから変えたいと思った。だから俺は、人生初めてのフルマラソンに挑戦することにしたんだ。だけど……

文字数

 27,760文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 プロの書いた物語。まるで本屋で販売されている文庫本を読んでいるようだった。冒頭から身につまされるように引き込まれた。中盤の走りに目覚めていく様子は、読んでいるこちらまで魂が解放されていくようで素晴らしい。三浦しをん著の『風が強く吹いている』が好きな人は、『42.195km』にも通ずるものがあると思う。(Kさん)

 

 まずはご注意点から。 ・・読書中、涙、鼻水が止まらなくなるおそれがあります。通勤電車内等でのご利用はくれぐれもご注意下さい。 私は泣きました。鼻をぐすぐすさせながら。通勤電車のなかで。 不審な眼差しを向けてくる皆さんに私は伝えたかった・・ 「貴方も、是非読んでみて下さい。さすれば私に生じているこの現象が一気に氷解するはずですから」 と。 人生はマラソンに似ている。 フルマラソンを走った経験がない私にはその言葉を発する資格がありませんが、でも強く共感してしまいます。 閉塞感に囚われたとき、えいっと踏み込んでみると、思ったとおりの困難が待ち構えていて、でもなんとかしてその困難を乗り切ると、ぱあっと予想もしなかった展開のなかに居た、そんな経験は身に覚えがあります。 この作品は、そんな『突き抜けていくような体感』をリアルに再現してくれるように思います。 どうぞ、ご一読を。 ただし通勤電車の中では 自己責任ですよ?(Jさん)

本編

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『カクヨムの天使』

 

ジャンル

 ヒューマンドラマ

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「カクヨムの天使」と名乗る魅惑的なレビューアーに翻弄されていく私

紹介文

 ある日、カクヨムに投稿した作品に「カクヨムの天使」と名乗るレビュアーから魅惑的で美しいレビューが送られた。それ以来、女性作家は「カクヨムの天使」からレビューをもらいたいがためだけに執筆し始める。
 読者という存在に翻弄される作家という人種の心理を綴った掌編

文字数

 6,554文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 書き手の心に棲む魔物。
 自分自身にすら理解ができない、それでいてどうしようもなく自分を突き動かす、恐ろしい魔物。その生々しい姿が、この物語の中にはっきりと描き出されています。
 主人公が取り憑かれていくその心理状態は、書き手としてあまりにもリアルで……背筋が寒くなる思いがします。
 そして、そのラストの衝撃に、脳が強烈に揺さぶられる。脳の奥で、何か巨大な振動がずっと続いていくような余韻が、いつまでも残ります。

 物を書く人には、ぜひ読んで欲しい。
——そして、読み手の方にもぜひ知って欲しい。書き手が心にどのような魔物を棲まわせながら、一つ一つの作品を書いているか。
 小説を愛する全ての人に、強く勧めずにはいられない作品です。(Aさん)

 

 存在感とインパクトがすごい。6,897文字に、これだけのインパクトを詰め込むことができる技術力は圧巻です。(Sさん)

本編

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『田舎暮らし』

 

ジャンル

 ヒューマンドラマ

キャッチコピー

 田舎に住むってどういうこと

紹介文

 東京生まれ、東京育ち、田舎に縁もゆかりもなかった若者は実は大の田舎好き。意を決して、宮沢賢治の故郷、岩手県に移住したが、そこで待っていたものは思いもよらない生活だった。

文字数

 13,681文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 美しい文章で紡がれる、ちょっと不思議で、勇気を貰える物語。文章が非常に丁寧で読みやすいです。 整っていて、綺麗で、物語世界に引き込まれます。 紹介されている田舎の情景を想像すれば、こちらもわくわくと胸が浮き立つ物がありました。 田舎でののんびりほのぼのスローライフかと思えば、ちょっと不思議な体験を交えつつ一人の青年が大きな一歩を踏み出すまでの物語。 読後感がとても良く、あとがきのコメントには前向きな気持ちを貰えました。 もっと沢山の人に読んで欲しいと切に願う素晴らしい小説です! ぜひ皆さん読んでください!(Kさん)

 

 表題通り、そしてPRにもある通り、宮沢賢治をかなり意識して書かれた作品です。 オマージュ、と評してしまっても良いのでしょうか。 主人公は宮沢賢治が大好きで、都会生まれ都会育ちの身でありながら、宮沢賢治に縁のある岩手の田舎に引っ越すことを決める。 最初は美しい自然の中での暮らしに浮かれていたが、そうそう良いことばかりな訳も無く―― 文体も宮沢ファンにはすっと入ってくる丁寧さ、読みやすさですし、描写の一つ一つが本当に美しい。 童話的なファンタジー要素も少し足されていて、すっかり世界観に引き込まれました。 私は「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」くらいしか知りませんが、十二分に楽しめました。 教科書くらいでしか読んだことないよ!…そんな方でも、安心して楽しめます。 勿論、真の宮沢賢治好きならきっと…。 是非。(Aさん)

本編

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『絶対に入っちゃいけない蔵』

 

ジャンル

 ヒューマンドラマ

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 じいちゃんちには、秘密があるんだ。絶対に入っちゃいけない蔵があるんだ

紹介文

 子ども時代特有の好奇心をテーマに、こんな話を書いてみました。子どもが恐れと興味を抱く蔵、果たしてその中にあったのは。

文字数

 2,944文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 ホラーでありながらどこか温かい作品。びくびくしながら読ませていただいたのですが、思っていたよりも読後感が良く、『自分ももっとちゃんとしなきゃな……』と思わせられるお話でした。成長することの意味もきちんと書かれている素敵な作品だと思います。怖い話が苦手な方でも楽しめる読みやすい短編なので、皆様是非ご一読を。(Kさん)

 

 蔵のなかには、秘密あり。夏になると思い出す。大好きなおじいちゃんの家。その古い家には蔵があって……蔵には、秘密がある。二十歳になって初めて触れることができる秘密。脈々と仕舞われてきた秘密。少年は、どうしてもそれが見たくなり……ちょっと怖いけど、爽やかな風を感じるようなお話です。(Jさん)

本編

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『山の神』

 

ジャンル

 ヒューマンドラマ

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 あなたが知らない昔話があるかもしれません

紹介文

 さあて、これが、どこの地方の昔話なのかは、わたくしは一向に分かりません。わたくしはただ、子供の頃に聞いたような、何やらの本で見たような、はたまた夢の中で尊い方がおっしゃったような気がするお話を申しているだけですので、細かいことを聞かれてもなんともお答えしようがありません。その点をお含みの上、わたくしが話す昔話に興味を覚えられた方は、どうぞお入りください。さて、そろそろ人も集まったようでございますので、話を始めてまいります。

文字数

 7,570文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 語り口が本当に昔話をその場で読み聞かせられているようで、入り込みやすかったです。『あさましい』と作中でも表現されている通り、生命について、人間が生きることについて良く良く考えさせられるメッセージ性の高い作品になっております。 自分はどうしてここまで生きて来れたのか? と考えるとグサリと胸が痛む内容です。とは言え非常に読みやすい話となっていますし、目を背けてはいけないことだとも思うので是非とも皆様に読んで欲しい話だと思いました。(Kさん)

 

 昔話で一度は聞いたことがある、生け贄を差し出す儀式。こんなことで災害がなくなるわけがないとバカにしていましたが……このお話では何か納得させられてしまいます。はたして誰が生け贄を喰うのか!? 正体を知った時、恐怖以外にも感情がわき上がるはず!(Tさん)

本編

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『妻の唇はいったいどれだ!』

 

ジャンル

 コメディ

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 この五人の唇のいったいどれかが妻の唇だ、それを言いあて妻を死の世界から救うのだ

紹介文

 五人の女とキスをして、見事、妻の唇を言い当てろ!
 それが、死んだ妻を現世に呼び戻すために閻魔大王が出した条件だった。
 妻を取り戻すため、俺の孤独な戦いが始まる。

文字数

 5,604文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 いや、あんたなに言ってんの!?(注:褒めてます)
 しょうもないです。ほんっっと! しょうもない!(重ねて言いますが褒めてます)
 死んだ妻を現世に呼び戻すために、五人の女とキスをして妻の唇を言い当てる。というお話。
……笑いました。不本意ながら。笑ってしまいました。なんか、負けた気がします。おもしろかったです。笑(Nさん)

 

 くだらないッ!いえ、最上級の賛美なのです!!
 まずは失礼な表題をお詫び申し上げます!!しかし、この作品において、他の方もおっしゃっているように、これ以上の賛美の言葉はないのです、はいッ!
 もう閻魔様に試されてはいるのですが、いい思いしかしてないじゃん!的な。
「金の斧ですか?」的な童話よりも激甘な試練。
 そして恐れるべきは、この世界にもっとも順応している、この主人公!ああ……閻魔様まで翻弄しているよ!
 でも、最後は夫婦の絆を感じさせる、フフッと笑えるオチ。こっちも下ネタなのだけども!!!
 卑猥すぎない、絶妙なバランスをキープしている笑えるエロ。面白かったです!(Oさん)

本編

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『文学におけるエロ表現の追求』

 

ジャンル

 コメディ

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 会話文だけで表現を極めんとする意欲作。決してエロが目的ではありません

紹介文

 エロいが妙に熱い博士と、エロに興味がないでもない押しに弱い美人女史との、面白おかしいコメディ小説。

 

文字数

 21,404文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 会話文だけなのに物語がきっちり成り立っていて、登場人物の行動が目に浮かんで面白かったです!
テンポも良く、テーマも色々と勉強になりました。
博士のエロにかける情熱が熱すぎて、博士のキャラが濃すぎて面白かったです。
たかがエロと馬鹿にしてはいけない作品だと思います。
かるーい気持ちで読めるので、皆様ぜひご一読を!(Bさん)

 

 まさかの展開ww エロ→ギャグ→アカデミック→ハートフル(?) と、頭の切り替えがコーヒーカップさながらに急転換させられました! ライブ感もあって、web投稿小説のエンタメ性を一段上のステージに押し上げた作品だと思いました!(Fさん)

本編

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長編

 

『鎮魂の唄 ~金剛薩埵編~』

 

ジャンル

 現代ファンタジー

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最強の密教僧と女子高生が織りなす重厚な和風ファンタジー。救いとは

紹介文

 かつて、蝦夷と呼ばれた地があった。そこは、鬼や悪鬼、古の英雄や神々の怨念が眠る地でもあった。時は現代、荒れ果てた寺に一人の僧がやってきた。その男の名は不空三蔵。真言を自在に操る、凄腕の密教僧。檀家の娘、小楢楓は、三蔵と行動を共にしていくうちに三蔵に惹かれ始める。
 しかし、三蔵の登場とともに、この地に不思議なことが次々に巻き起こる。三蔵はこの世界を救えるか。そして、仏に至るものだけが備えると言われる十全の力とは、いったい、いかなる力なのか。

※この物語は仏教世界を下地にした仮想ファンタジーであり、実際の仏教とは一切関係ありません。

文字数

 170,000文字

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 感動です。号泣です。★を100個くらい付けたいくらいなのに無理みたいです…カクヨムさんケチです。執筆ありがとうございます。何度読み返しても涙が出ます。どないすんねん、アラサー女子泣かしてからに…(爆)(Aさん)

 

 あの……これ書籍化はいつですか?(混乱)言葉運びといい、情景の美しさといい、素晴らしいの一言です。三蔵、生き(息)返るって信じてたよ!!(Aさん)

本編

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『リバイアサン』

 

ジャンル

 ダークファンタジー

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 神は人に試練を与える。どれほど過酷であったとしても、それは神の愛の故だ

紹介文

 ある村外れの館で肉塊と化した6人の男の死体が発見された。唯一生き残った少年は狂ったように、「リバイアサン……」と繰り返すのみだった。数年後、ある剣士が街を捨てて、世界へと歩き出す。剣士は出会った仲間とともに過酷な世界の仕組みに苦悩しながらも、あのリバイアサンの謎に立ち向かっていく。世界とは、神とは、人とは、そして、誰一人立ち向かうことのできぬ怪物として語られるリバイアサンとは一体なにものか

文字数

 1,000,000文字(予定)

読者からのコメント(一部掲載。他は本編にて)

 誇張ではなく、今まで読んだweb小説の中で一番読みやすい文章、一番読みやすい小説です。私は「完読」が苦手な方で、商業小説の方でも途中でやめることはありますし、いわんやweb小説となると最後まで読めた小説というのはほとんどありません。 でもこの小説は、読み続けることができます。一体なぜこれ程読みやすいのか。わかりませんw むしろ重厚なんです。改行が多いわけでもなく、一人称でもなく、地の文もしっかりしていて、重厚なのです。なのに恐ろしく読みやすい。多分、無駄が一切ないのでしょうね。そして内容ですが、かなりダークです。主人公含めて暴力的な登場人物がたくさん出て来ます。ちょっと次のページを捲るのが怖いような。その意味でホラー小説的な感覚もあります。怖いなあと思いつつも、引き込み力がすごいので次を読んでしまいます。(Nさん)

 

 この『物語』に出逢ってしまったとき、私がまず思ったのは『カクヨム』って凄い!という、ちょっとピントがずれた驚きでした。いや、でもまさか、こんなにも凄い『物語』に出逢えるとは思ってもいなかったので。古典的なスタイルをそのまま引き継いでいるというくらいに、正統的な物語展開。舞台設定や人物像も、古えから続いてきたような伝統的なものを感じます。でも、決して使い古されたような陳腐さはありません。むしろ、脈々と続いてきた『物語』の持つ力に、びしびしと圧倒されてしまいます。もう、とにかく夢中になって読んでしまいます。魅惑的な世界観。魅力的な人物像。壮大なテーマ。これぞ本物の『物語』。もう、ワクワクが止まりません。(Jさん)

本編

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エッセイなど

 

初心者向け面白い小説を書くための小説技法

読まれる小説、面白い小説を書くためのちょっとしたヒントやテクニックを伝える初心者必見のエッセイ集です。

 

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初心者のための小説投稿サイト攻略エッセイ

投稿した小説がさっぱり読まれないと嘆いている方々へ、小説投稿サイトで読まれるためのヒントや向き合い方など、カクヨムでの実体験をもとにした初心者必見のエッセイ集です。

 

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心に残る言葉

人生に大きな影響を与えた、どうしても忘れられない本、心に響く言葉、心に残る言葉を古今の名作の中から紹介していきます。

 

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社会に対して好き勝手に放言します

今の社会はちょっとおかしいよってことを好き勝手に放言します。そりゃ違うだろと思う方もいるかもしれませんが、僕個人の心の叫びだということで、ご容赦願います。

 

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【聖書世界をモチーフにしたダークファンタジー小説】『リバイアサン』(四十四) イラルの思惑

 翌日の朝、旅の準備を整えたレインハルトとリュウは出立の挨拶をすべく、リオラとマッテオの前に立った。

「マッテオ、お前には面倒をかけるが、リオラのことをくれぐれもよろしく頼む」

 マッテオはレインハルトの言葉を聞くと、大きく胸を叩いた。

「任せておけ! お前には遠く及ばんが、俺も千人力のマッテオと呼ばれた男。俺は俺のできることをしっかりと果たすつもりだ」

「それでこそ、マッテオだ。私の最も信頼する男であり、真の友だ」

 マッテオの言葉にレインハルトは満足げに頷き、マッテオと抱擁を交わした。マッテオは最後に力強く言った。

「レインハルト、お前はまごうことなき神がお選びになった聖騎士、相手が万だろうが、十万だろうが、お前を遮ることができるものなど誰もいない。イラルのものどもはきっとそれを思い知ることだろう」

 レインハルトはマッテオの言葉に頷き、今度はリオラの方を向いた。

「では、行ってくる―――リオラ、そんな顔をするな。お前にはそんな顔は似合わないよ。私は必ず帰ってくるから」

 レインハルトは泣きそうな顔で自分を見つめるリオラを見るとにっこり微笑み、リオラを抱きしめた。リオラは泣き顔を見せまいとレインハルトの背に手をまわして、ぎゅっと顔をレインハルトの胸に押し付けた。だが、ぽろぽろと溢れ出る涙はどうしようもなく、その涙はレインハルトの胸を濡らした。レインハルトは嗚咽を必死に堪えるリオラの背中を愛おしそうに何度も何度も摩った。もはや我慢できなくなったのだろう。リオラは涙で真っ赤になった眼でレインハルトを見上げた。

「レインハルト、絶対に帰ってきてね。絶対に絶対に帰ってくるんだよ。あなたは私と約束したんだからね」

 レインハルトはリオラの顔を見た。その眼は涙で潤み、宝石のように美しく輝いていた。

「ああ、分かっている。お前は私の宝物だ。私は必ずお前のもとに帰ってくる。リオラ、私を信じてここで待っているんだよ」

 レインハルトが誓うように言うと、リオラはようやくにっこり微笑んで、最後にもう一度だけレインハルトを抱きしめた。

 そして、今度はリュウの方を向いてリュウを抱きしめた。リュウはどうしたらいいか分からず、されるがままにその場に突っ立っていたが、リオラそんなリュウの耳元で小さく囁いた。

「リュウ、あなたも私と約束したんだからね――あなたはルークの家のベッドでひどくうなされながら私に言った。もう一人になるのは嫌なんだって。私はあなたの手を握って約束した。私はずっとあなたと一緒だよって。だからリュウ、絶対に帰ってきてね」

 リオラの言葉を聞いて、リュウはルークの家で生死を彷徨っていた時に見た夢を思い出した。

 いつも見る夢。
 昏く、荒涼たる荒野に一人きりで歩いている夢。
 でもそのとき、リュウはそこで天使のような少女に会った。
 そして、その少女はリュウに言ってくれた。

 『あなたはもう一人じゃない。さあ、こっちにおいで、さあ、私の手をつかんで。帰ろう、私たちのいるべきところへ』と。

「……あれはお前だったのか」リュウが小さくつぶやいた。

「……そうだよ。私はあなたとずっと一緒だよ」そう言って、リオラはリュウの体をぎゅっと抱きしめた。

 あの夢と同じように、なぜか温かった。母に抱かれているような温かさがあった。どこか遠い昔に感じた温かさ。

 リュウは小さな声で言った。

「俺は帰ってくる。レインハルトも連れて必ず戻ってくる。だから安心しろ。お前を一人だけ残しやしない」

「――うん」

 リュウの言葉にリオラはうれしそうに小さく頷いた。
 こうして、リュウとレインハルトはリオラとマッテオに別れを告げ、ウルクの街をあとにし、イラルの軍勢が待ち受けている国境に向けて歩き出していった。

 

 その頃、当のイラル軍は国境の街ダンを包囲するように布陣していた。イラル軍を率いるタルタンはダンの街を眺めると、腹心のマルドュクに話しかけた。

「しかし、これだけの大軍をもってはるばるやってきたというのに、村を一つ、二つ、焼きつぶしただけで、あとはずっと、こんなところでじっと待つだけとはなんとも退屈な話ではないか。なあマルドュクよ、どうせなら奴が来るまでの手すさびに、あそこにいるやつらを皆殺しにしてみるのも面白い余興ではないか。この大軍をもってすれば、わずか一日で踏みつぶせるぞ」

「退屈なのは分かりますが、女王の命はあくまでもレインハルトを殺せということです」マルドュクはなだめるように言った。

「しかし、いくらあの男が相手といっても、たった一人に二万の大軍とはな。これでは、イラルの面目も丸つぶれではないか。しかもその光景をあの臆病者どもがあそこから高みの見物をしているのだぞ」

「それはやりようでございましょう。我が軍にも剛勇の男がおります。まずは、彼のものをレインハルトと対峙させてはいかがですかな」

「イロンシッドのことか」

「はい」

 タルタンはにやりと笑った。

「面白い。だが、相手はレインハルトだぞ、あっさり負けてしまうようでは、これまた、我が軍の面目に関わるぞ」

「それは、私にお任せを」

「何か、手があると見えるな。よし、お前に任せる。見事、レインハルトを討ち取ってみろ」

「必ずや、ご期待に添えるでしょう」マルデュクはそう言うと初めて不敵に笑った。

 

幕屋の中

 

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