アマチュア作家の成り上がり執筆録

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【小説の書き方について考える】小説技法 ~長編の書き方 その2~

 前回は、書こうとする長編の世界観をイメージできるものを見つけようみたいな話で終わりました。

 となると、次はプロットを作るということになるのですが、僕の場合は、そこがちと微妙なんです。なんというか、その世界観を考える時にプロットみたいなものを一緒に考えてしまうんですよね。

 どういうことかというと、前回紹介した「リバイアサン」という僕の書いている長編で例えると、リバイアサンという聖書に描かれる怪物をイメージしたと昨日書きました。
 でもそれだけじゃ、ただの怖い怪獣に過ぎません。
 だから、リバイアサンというものをどう物語に生かそうかと考えていたら、他にもいろいろとキーワードがぽつぽつ浮かんできたんですよね。
 腐臭漂う現代の姿、宗教に翻弄される人間、世界を破滅に追いやるアンチクライスト(獣)。特にアンチクライストは人であるという聖書の一文が、かなり自分の中で大きかった。
 リバイアサンという存在を神が世を滅ぼすためにこの世に送り込まれた人であるしたらどうだろう。そして、その世界をまさに現代の鏡として書けば、まさに現代に生きる僕たちの苦悩や叫びも書けるんじゃないか。

 

666の獣

『666の数字の獣』(作:ウィリアム・ブレイク

 

 リバイアサンという赤子がこの世に生を受け、この世界を滅ぼす。
 それは、人間を滅ぼすために神が遣わした破壊者。
 だが、当然、ただ滅ぼされるわけにはいかない。
 そこに立ち向かう存在が必要だろう。
 その存在を主人公として、リバイアサンとは何者であるか、神がリバイアサンを放った理由は何なのか、そういうものを人間の視点から解き明かす。そうすることで神という存在に対して人間が抱いている叫びすらぶつけることができる。
 そこまで思った時が、僕の中で「リバイアサン」の世界観とぼんやりとしたプロットが完成した瞬間でした。そこで僕はこの「リバイアサン」という物語を書ける気がした。

 僕の手順を聞いて、普通そこまでが物語の世界観を作るってことだろうって思う人がいるかもしれません。だが、僕が言いたいのは、その世界観を作るという作業はそんな一瞬に閃くというのではなく、熟成させる必要があるということなんです。
 物語の全貌がフラッシュのように一瞬に浮かぶような才能あふれる方なら、そんな面倒なことはしなくてもいいかもしれない。
 ただ人間の想像力というものは、順を追っていくにしたがって膨らんでいくものだと僕は思います。
 ある言葉から、違う言葉がうまれ、その言葉がまた別な世界を作っていく。
 これは違うという言葉もある。こっちの方がいいということもある。
 だが、その繰り返しが、物語の精度とオリジナリティを高めていく。

 ゆっくりでいいから、考え抜いてみることが大事だと思う。
 これだっていうキーワードを見つけ、それを膨らませてみればいい。
 そしてある程度できた段階で、自分に問いかけてみればいい。
 これは自分が本当に書きたい物語かと。
 自分が本当に書きたいテーマがそこに入っているかと。
 そこで、書けると感じたときこそが、その物語に初めて命が吹き込まれた瞬間だ。

 長編を書くというのは本当に大変な作業だ。
 大抵、途中で書けなくなる。
 その時に、歯を食いしばって書き続けられるか。
 それは全て、この最初の手順の中で生まれた思いに依存する。
 それが弱い時は、おそらく書けなくなるだろう。
 自分の貴重な時間を費やす価値が、この物語にあるか。
 そこをしっかりと見極めることが長編を書く上では、とても大事だと僕は思います。

 

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