三界の狂人は狂せることを知らず
四生の盲者は盲なることを識らず
生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
死に死に死に死んで死の終りに冥し
引用:『秘蔵宝鑰』(著:空海)
この文章、非常に印象的なフレーズで、一度読んだら忘れられないんじゃないだろうか。
空海和尚は密教の祖というだけでなく、筆や歌もよくし、文章にも通じた当代きっての才人であり、なんと日本初の小説ではないかと個人的に思っている三教指帰という書物までも書いているが、この文章を見ると、改めて空海の凄さ、人を惹きつけてやまないその言葉の魅力に圧倒させられる。
人というのは自分たちがどこから生まれたのかも知らず、自分たちがどこにいくのかも知らず、何も知らぬまま死んでいく。
まさにそのとおりだろう。
生きる意味を死ぬまでに悟れるのか、そもそも生きる意味なんてあるんだろうか。
そんなことに振り回され、結局、分からずじまいで死を迎える。
そんなことの繰り返しなんだろう。
この文書をもってきたからと言って、僕は別に密教を信仰しているわけではないし、どの宗教にも特別の思い入れはない。
だが、無神論者とは違う。
なにか特別な、人智を超えるものがきっと存在し、この世界にはきっと意味があるに違いないとは信じている。
でもそれを見つけられるかどうか、おそらく見つけられず、同じように死んでいくんだろうと思う。
ただ最後の刻を迎えたときに、こうありたいと思うことが一つだけある。
それは、人生いろいろあったけど、まんざら悪くなかったなと笑って死にたい。自分の歩んできた人生に納得してこの世を去りたいということだ。
だから後悔したくない。
夢や希望を捨てたくない。
結果はどうでもいい、その夢に向かって、必死になって頑張ってみたい。
自分の人生に後悔しないために。