アマチュア作家の成り上がり執筆録

素人作家がどこまで高みに昇ることができるのか

【小説の書き方について考える】小説技法 ~聖書 その2~

 創世記にカインとアベルという兄弟が出てきます。この二人はエデンを追放されたアダムとイブが生んだ最初の子どもたちです。

 このうちカインは畑を耕し、アベルは羊を飼うものとなります。ところが神はアベルの捧げものは受け取ったのにカインの捧げものには見向きもしません。これに腹を立てたカインは野原にアベルを呼び出して、殺してしまいます。
 そして神が「アベルはどこにいるか?」とカインに尋ねると、カインは「知りません。私は弟の見張り番なのですか」と神に対して嘘をつきます。
 神はこの罪に対して、カインを荒れ野に追放するのです。

 つまりカインは人類最初の殺人者であり、嘘をついた最初の人間なのです。

 

 

 でもこれもよくよく考えると理不尽なことがあります。なんで神はカインの捧げものに見向きもしなかったのでしょうか? いろんな説がありますが、それは結局、そうじゃないかという推測です。肝心なことは聖書ではそのことについて一切書かれていないってことです。つまり理由もないまま、カインは神に拒否されたのです。

 心理学者のユングは神を父親に置き換え、父親からのいわれなき差別による兄弟間の心理的葛藤をカインコンプレックスと呼びました。

 これって、結構、僕たちにもあてはまるんじゃないでしょうか?

 正当な理由があって拒否されるなら話は分かります。ですが理由もなく拒否される。それは人間にとって、とりわけ幼い子供にとって、もの凄く大きな精神的ダメージだと思うんです。

 僕はこの話を考えれば考えるほど、カインに同情してしまいます。そういう僕はキリスト教徒からすれば許しがたい人間なんでしょうね。

 現在、執筆中の「リバイアサン」という物語に出てくるカインというキャラクターは、別にこうした体験を持っているわけではありませんが、神に対峙するものとして最も相応しいと考え、その名をお借りしました。
 つまり僕の中ではカインはヒールではありますが、ある意味、共感できるキャラなのです。このカインを上手く描けるかどうかで、「リバイアサン」という物語の出来が決まると思っています。

 

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