アマチュア作家の成り上がり執筆録

素人作家がどこまで高みに昇ることができるのか

【小説の書き方について考える】小説技法 ~ファンタジーとリアリティ~

 僕はファンタジー作品が好きだが、好きなファンタジー作品には共通点がある。
 それは、深い知識とその作者ならではの新しい要素がきちんと折り合って、奥深い世界観が構築されているかということである。

 例えばファンタジーと言えば魔法であり、火の魔法、雷の魔法、水の魔法、いろいろある。
 でも単にそういう魔法があるというのではなく、例えばそこに陰陽五行の考え方を組み入れると、その魔法体系がいっきにリアルに感じられる。
 火は水に弱い、水は土に弱い、土は木に弱いと、まあ、そんな感じだが、そうした考え方はおそらく世界中に共通するんじゃないかと思う。

 熱に関しても物理法則に基づけば、

 「龍が吐いた真っ赤な炎は周囲の街を焼き尽くした」

 「龍が吐いた青い炎は周囲の街を一瞬にして蒸発させた」

 という似たような二つの文も、龍の吐く息の色によってその威力が違うが、至極理に適っている。

 

スマウグ

 

 光には波長というものがある。
 虹を見ればすぐに分かるが、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫という風に分かれる。
 これは波長の違いによって屈折率に差があり、大気中の水滴にぶつかったときに光が波長ごとに分かれるために、こうした色合いとなるからである。

 波長の違いというのは、言い換えれば、エネルギーの強弱と言い換えてもいい。
 上の例でいえば、赤が弱く、青が強いということになる。ところが実は青よりも紫よりも強い波長の電磁波がある。
 それを紫外線という。紫外線は細菌を殺し、人間の肌も容赦なく焼く。
 さらに波長が強い電磁波としてX線があり、医療機関で厳重な管理のもとに使われてることは誰でも知っている。つまり物理法則を正しく理解することによって、魔法にリアリティを味付けすることができる。

 もちろん魔法なんだから好き勝手に考えてもそれはいい。
 でもそれであればその世界の法則を説明しないと、読者はその世界の現象がすとんと入ってこない。初めて読んだ人は現在の物理法則に基づいて物事を考えてしまい、それとはかけ離れたことを言われると物語の世界に入っていけなくなる。

 面白いファンタジーを書く人は逆の意味でこの世界の自然をよく見ていると思う。
 この自然をよく理解し、そこに不可思議さを感じて、そこに自分の新たな世界観を生み出す。
 ファンタジーなんだから、オークやゴブリンがいるのは当たり前だろ。
 魔法あるの当り前じゃねえか。
 確かにオークやゴブリンは人口に膾炙しているので説明なく使ってもいい。
 でもだったら、そういう物語は、これまでのファンタジーと何が違うのと言いたくなる。
 はっきり言って、ドラゴンクエストやらファイナルファンタジーと同じようなことを書いているんなら、そっちのゲームした方が面白いんじゃないかと言いたくなる。

 指輪物語の作者トールキンは、オークはかつてエルフと同族であったが、闇の魔王により作り変えられ、あんなに醜くなったというストーリーにしている。
 だからこそ、オークは美しい姿のままのエルフに異常なまでの敵意を抱く。
 こういうものが、その作者ならではの新しい世界だと思う。

 当たり前のように魔法を使うのはいいけれど、一度、自分の世界の法則をよく考えてみるといいと思う。一人でその世界に浸るのであればいいけど、読者が入っていける世界を作れなければ、やっぱりそういう物語は読まれないと僕は思う。

 

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