アマチュア作家の成り上がり執筆録

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【小説の書き方について考える】小説技法 ~長編の書き方 その5~

 キャラを立たせる。
 これは本当に難しい問題です。
 こう書けばキャラが立つなんて答えはたぶんない。
 だけど僕的に、こういう書き方はイマイチだなというのはあるので、今日はそれをテーマに書いてみたいと思います。

 例えば、学園一の美少女キャラを登場させようとします。
 そのキャラを登場させようとするときに、どう書きますか?

 ドアをとんとんと叩く音がした。
「空いてますよ」教授はそういって振り返った。
 すると学園一の美少女、花咲麗が入ってきた。

 まあ、こんな書き方もあるんでしょうね。
 この女性が単なる端役ならこれでもまあいいでしょうけど、これがメイン級のキャラだとしたらキャラの説明としては弱すぎでしょうね。

 ドアをとんとん叩く音がした。
「空いてますよ」教授はそういって振り返ったが、入ってきた少女を見た途端、思わず息を飲んだ。そして呟くように言った
「……もしかして君があの……」
 博士の視線を感じ、体の置き場所がないように身をそぼめていた少女は、その言葉を聞いて顔を赤らめた。
 博士はそんな少女の仕草を見てごくっと唾を飲み込んだ。
「……君の……君の名は」
「……麗……花咲麗です」少女は消え入るような声で囁いた。

 

 

 まあ僕の書き方にもだいぶ問題はありますが、伝えたかった一番のポイントは、学園一の美少女という言葉はそのままでは絶対に使いたくないということです。
 人を形容する言葉はたくさんあります。
 美しい、可愛い、優しい、かっこいい、男らしいetc

 よく陳腐な形容詞を使うなという言葉がありますが、僕が思うにメインキャラを説明する際にこんな形容詞を使ったとしたら、それこそ陳腐な形容だといわざるをえない。なんでもかんでも特別な形容詞を使う必要はないが、やはりメイン級のキャラを形容する場合は、その書き手のオリジナリティあふれる筆致で書いて欲しいと思うのです。

 美少女なんて言葉ははっきり言って、読んでいるこっちの方が恥ずかしくなる。そんな言葉が乱発され、タイトルにまでつけられたとしたら、僕はとてもそんな本は買えないし、買わない。

 しかし現実はそういう言葉がどんどん溢れている。
 なぜか?
 僕が思うに、それは書き手の怠慢に他ならないからだと思う。
 実際、確かにお手軽なんです。
 美少女、美青年、なんかそれだけで勝手に読者がイメージしてくれる。
 でもそれって、もの凄くテンプレ化した言葉なんですよね。

 なんの個性も特徴もない言葉。
 学園一の美少女。
 これ聞いて読者の頭に浮かぶキャラ像は千差万別。具体的な何の共通項もない。
 私はそんな言葉は使わないという方がいるかもしれません。
 でも実は美しい、可愛い、優しい、かっこいい、男らしいというこんなごく普通の形容詞すらも、結局は同じことなんですよね。美しい、かっこいいなんて書かれても、読者の頭に浮かぶのは、やっぱり人それぞれ。そういう言葉はキャラの特徴をなんら反映していない。

 キャラを立たせようと思うんなら、誰の頭にもこんな奴だろうというのが、ありありとイメージできるようでないとだめだと思う。

 でもほんとのことを言うと、キャラの本当の個性とは外見や容姿などではなく、そのキャラのもつ内面性にこそその源泉があると僕は思っています。

 かっこいいキャラをどうやって書くか。
 実は、その答えはあなた自身の中にあります。
 あなた自身の中に、かっこいいと思う人間像がなければ、かっこいいキャラなど書けはしない。みんなが感動できるようなキャラなどかけようはずがない。

 恋愛で苦しんだからこそ、恋愛に対して溢れるような想いが込み上げる。
 辛い体験をしたからこそ、人の辛さを理解できる。
 自分もかっこよくあろうとしたからこそ、かっこよい生き方に共感できる。

 書き手は自分の体験を切り売りして書いているようなものです。
 必ずしもかっこいい体験ばかりではない。犯罪まがいの、人に聞かれたら恥ずかしくて顔も上げられなくなるような、そんなことだってしたかもしれない。
 でも、そこにはリアルな人生がある。
 書き手に必要なものは、そのリアルな体験の中から何かをくみ上げること。

 キャラが立ってない一つの理由は、そのキャラに押し込めようとした内面性をあなたが十分に咀嚼できていないからに他ならない。
 勇気、誇り、怒り、優しさ、狂気、憎悪……
 そうしたものがあなた自身の中にありますか。
 あなたは何を叫ぶことができますか。
 魂に何の叫びも持っていない人は、そういうキャラだって書けるはずがないんです。

 年は関係ない、人生経験が少なくても、叫びをもつ人間はたくさんいる。
 いや、若い人の方が日々心の中で叫んでいるだろうと思う。

 ということで、また最初に戻ってしまうが、やっぱりキャラを作るにあたってもこれが一番肝心なことだと思う。
 すなわち、あなたは何を書きたいのかってことです。
 あなたが書きたいものの中にあなたの叫びが入っていれば、その中に出てくるキャラの中に自然とあなたの叫びが入ってくるでしょう。
 それがキャラクターに、この世に一つしかない個性を与えることになるんです。
 テンプレやアニメに頼っているうちは、キャラにオリジナリティなんか出すことはできません。
 キャラのオリジナリティとは、あなた自身の中にあるのだから。

 

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