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素人作家がどこまで面白い小説を書くことができるか

【小説技法】長編の書き方 その9

 最後の一行を書き終えたときの気持ち。
 この感動は長編を書いた人しか分からないと思います。
 長かった道のり。
 何度も挫折しかけ、それでも頑張って書いてきた。
 そして今、目の前に自分の作品が誇らしげにある。

 長編を書き終えた人は、自分を誇っていいと思います。
 それだけのことをやり遂げたと思います。
 しばらくは、この思いに浸ってのんびり過ごしていいと思います。

 でも、ちょっと待って欲しいんです。
 最後のひと仕事をして欲しいんです。
 すぐじゃなくていい。
 少し間をおいてからでいい。
 自分の書いた物語を最初からもう一度読み直してほしいんです。
 自分の書いた物語を推敲して欲しいんです。

 小説投稿サイトだと、今さら前に書いたものを直してもなって思うかもしれませんが、それでも見直してほしいんです。
 その時は一話ごとに読むんじゃなく、ワードか何かに全部くっつけた状態で、できれば縦書きで読んでみて欲しいんです。
 そうすると、絶対にいろいろと粗がでてくるはずです。
 誤字脱字はもちろんですが、そういうことよりも全部書き切って始めて感じる、作品として無駄なところ、足りないところが見えてくると思うんです。
 もしかすると、一つのエピソード丸ごといらないことになるかもしれません。順序が入れ替わるかもしれません。
 書いているときは、そう言うところに気づきにくいし、せっかく書いたのだからと、思い切った推敲ができないんです。だから全部くっつけてもう一度切ったり貼ったりできるような状態で読むべきなんです。

 そして、縦書きで読む。
 ライトノベルですら、本になれば縦書きです。
 縦書きで読むことによって、また別な印象を持つと思います。
 そこを感じて欲しいんです。

 自分の作品を客観的にあたかも読者の視点で読む。
 そうして、もう一度手直しする。
 それだけで、あなたの作品は倍ぐらいよくなりなす。
 その振り返りの作業は自分の課題を浮き彫りにしてくれます。
 自分の良いところ、まだ弱いところを感じることができます。
 だから推敲は大事なんです。
 自分の書いた物語をさらによくするために、さらに自分を高めるためにもう一度物語を見直してみてください。

 

 さて、長かったこのテーマも今日で終わりかなと思います。
 これまで随分生意気なことを好き勝手に言ってきました。
 反感を感じられた方もいたかもしれません。
 でも僕は書き方だけを伝えたかったわけではありません。
 確かに長編を書くことは大変だけど、それに見合う喜びと成長を与えてくれるものですよということも伝えたかった。

 以前、カクヨムで書いていた時に、ある方からこんな素敵なコメントをいただきました。

 

 「……ぶんちくさんのこのエッセイを読みだして、長編をまた書かねばという気になっています。以前とは違う出来の長編。でも、なかなか長編までの題材が思い浮かばなくて苦労してます。それでもやっぱり書きたいんですよ。自分でもなぜかはわからないのですが、書きたいものが見つからないのに書きたいと思う。それはかなり矛盾してますよね。きっと触発されてるんですよね
……」


 僕の言葉はたんなるアマチュア作家の一放言に過ぎません。それでもこうして何かを感じてもらい、新しい創作のきっかけになったとしたら、こんなうれしいことはありません。
 何度もいいます。
 長編を書くのは大変です。
 書くことが思い浮かばないときもあるでしょう。
 あまりの先の長さに呆然とすることがあるでしょう。
 こんな辛いことに時間を費やすなら、もっと楽しいことした方がいいと思うこともあるでしょう。
 読まれないことに、心が折れかけます。
 もういいやと思うこともあるでしょう。

 だからこそ、最後まで書き切り一つの物語が完成したとき、物凄く感動するんです。
 自分を誇らしく思うんです。
 大変だからこそ、挑戦する価値があるんです。

 今現在、長編に向かっている方もいるでしょう。
 長編を書いてみようかと思っている人もいるでしょう。
 ぜひ、頑張ってください。
 最後まで書き終えたとき、きっとあなたは書いてよかったと感じると思います。

 以上、ながながと書いてきましたが、これをもって「長編の書き方」を閉じさせていただきます。お付き合いいただき、本当にありがとうございました。 

 

達成感

 

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