芸能を職とする人たちは、華やかに見えてその実相は僕たちが想像できないくらい大変なんだろうなと思う。
演技するいうことは、ある意味その配役になり切る必要がある。
能などは、恨みを残して死んだ人の魂を憑依させるともいわれる。
そう言う意味では、苦しい役を演じる方々は、その心を自分の心に宿らせているんだろうし、それは相当厳しいことのように思う。
そして、それは書き手であっても同じことだと思う。
僕はいい物語は、全てのキャラに血肉が通っていると思っている。
ということは、悪役や悲運な運命を背負ったキャラにも書き手は心血を注いで、血肉を与えなければならない。
言うのは簡単だが、実際、それはかなりエネルギーを使う作業で、時折、抜け殻のようになり、書くのが嫌になるときがある。
昔から芸術家と呼ばれる人たちが、自殺したり、精神を病んだりする人が多いというのも、そういうことを考えるとなんだか分かる気もする。
そう思うと、創作というのもなかなか恐ろしいもので覚悟が必要なものなのかもしれない。
こんなことを考えてると、ニーチェの有名な言葉を思い出す。
怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ