「失礼します! 私、今度ここでお世話になります白鳥さやかといいます。どうぞ、よろしくおねがいします! ――あの、どうかされたんですか。私の顔に何かついてますか」
「いや、君みたいな美人が、なんで私の研究室で働きたいと思ったのか不思議でね。きみは私が何を研究しているか知ってるんだろうね」
「もちろんです。博士は文学におけるエロ表現を研究されているんですよね。私、大学では文学部を専攻しておりまして、こうした分野には非常に関心があったものですから――博士のお名前ももちろん存じ上げておりました」
「そうか。ならば安心だが、一つ断っておきたい。私はエロというものに非常に関心がある。だがそれは、純粋に研究対象として捉えているので誤解しないでほしい」
「もちろんです」
「だから、たまに私がきみにエロい話をしても、決してセクハラなどと騒いでもらっては困る。僕は純粋にエロい話が女性にどのような反応を引き起こすのかを知りたいだけなのだ」
「……はい」
「ところで、君はエロい話が好きか」
「……えっと、あの、嫌いじゃありません」
「それは真理を追究する研究者として的確な答えではない。否定の否定は結局のところ、どっちともとれる不確かな態度だ。もう一度、聞こう。君はエロい話は好きかね」
「……す、好きです」
「よし、合格だ! 君を採用することとする!」
「博士、なんだか、博士の顔がひどくにやけて、うれしそうなんですけど……」
「あたりまえじゃないか、君のような美人で優秀な助手が来てくれるのは、私の研究にとって大助かりだ。きみと二人でノーベル化学賞を目指そうじゃないか」
「これは化学なんですか?」
「きみ、エロは化学だよ。エロは様々なものと結合して、予想もしない化学反応を起こし、とんでもない結果を導き出すんだ。わかるだろ、男の精巣から作り出された精子が、女体の秘められた部分に突撃し、あの黄金の卵にぶつかって、新たな生命を作り出す。まさに究極の化学そのものではないか!」
「……あの、よくわかりました。ところで私はどのような仕事をすればよろしいのでしょうか」
「君の仕事は私たちの話をメモって、カクヨムというサイトに投稿することだよ」
「えっと、それはなにか研究者のための発表サイトですか」
「いや、ただの素人の小説投稿サイトだ。だが、あなどっちゃいかん、ここにもかなりのエロがいるはずだ、ぜひとも彼らの反応が知りたいんだよ」
「……博士、もう一度だけ確認しておきますが、これは学問なんですよね」
「当り前じゃないか! 白鳥君、さっそく明日から、仕事開始だ。今日はもう帰っていいよ。ああ、そこに散らっている、エロDVDは気にしないでくれ、明日までには、すべて視聴して処分しておくから。それから一つお願いがあるんだが、明日からはミニスカートを履いてきてほしい。パンストはヌーディベージュ、パンプスのヒール高は、5センチ以上で頼むよ、以上だ。では明日からよろしく」
「……」