「……白鳥君、なんて、君は柔らかいんだ。それに、石鹸のすごくいい香りがする」
「……博士」
「僕は、確かにエロだ。だが初めて、エロではない何かが心の中から溢れ出るのを感じるんだ――君が、いなくなってしまったとき、私は自分の心が張り裂けそうだった。君に会いたくて、会いたくて、心とはこんなに痛いものなのかと、初めて気づいたんだ。白鳥君、僕は君が好きだ。君が嫌なら、こんな研究なんか投げ捨てたっていい。だから、僕の隣にいてほしいんだ。白鳥君……こんな僕じゃダメかな」
「博士……博士って、エロのことは詳しいのに、女心は全然わかってないんですね。博士のこと好きじゃなかったら、あんな恥ずかしいかっこなんてしません。それに……こんなところに、ついてきません……」
「白鳥くん、それじゃ!」
「……私も博士のこと好きです。エロい博士も、真剣な博士も、傷つきやすい博士も、大好きです」
「白鳥君!」
「博士!」
「白鳥君、こんな研究なんて、もうどうだっていい。このあと数行足して、こんな文章をいれれば、この話もここで終わりにできる」
「どんなのですか」
「例えばこんな感じだ。
「『じゃあ、行ってくるよ』
『行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね。でも、駄目だよ、新しい助手さんにエッチなことしちゃ』
『こらさやか、ジュニアの前で何を言うんだ――ジュニア、可愛い可愛いジュニア、ほら、パパにチュウしなさい』
『ずるい、私にもチュウして!』
『お前とは今夜もたっぷりできるだろ』
『いやいや! 今してくれないと今日はしてあげないから』
『分かったよ。ほんとに可愛いな、さやかは――』
『――早く帰ってきてね』
『速攻で帰ってくるよ。さやか、愛しているよ――じゃ、行ってくる』
『いってらっしゃあい!』
なんて、文書を入れれば、ラブコメ作品として立派に完結することができる」
「……ちゃんとそうしてくれるって約束できます? ちゃんとそうしてくれるなら、私、もう少し博士の研究お手伝いしてもいいです」
「白鳥君……」
「だって、ここで終わっちゃったら、博士がこの研究で果たそうとした悔しさが解決されないままじゃないですか」
「……だが、白鳥君、ここから先はもっとも危険な描写がつきまとってしまうよ」
「博士と一緒なら、私、そんなこと構いません」
「――よし、分かった! 僕も覚悟を決めようじゃないか。どこでバンされるか、カクヨムと勝負だ!」
「博士、でも、やさしくしてくださいね……」
「あたりまだろ。カクヨムコンに応募するためには、あと8万字近くも書かなくてはいけないんだよ。いったい、いつ本番が始まるのか、僕にもさっぱり分からんよ」
「……最大延長18時間と書いてますが……」
「……」
(続く)