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【聖書世界をモチーフにしたダークファンタジー小説】『リバイアサン』(五十三)館での虐殺

 どこか知らない館にいた。
 目の前に妙なやつらがいた。一人、二人……六人か、そいつらは変な仮面をつけて、何か低い声で呪文のようなものを唱えていた。その声は重苦しく、そして何か禍々しく、聞いているだけで心がざわざわと嫌な感じがした。そいつらは部屋の中央の大きなテーブルを囲んで呪文を唱えているのだが、どうもそのテーブルの上には、子どもが一人いるようだった。

 仮面のやつらの影でよく見えなかったが、まだ小さい子どもがその上に寝かされていた。そいつは、なんとかそこから逃れようともがいていたが、縄か何かで手足を縛られているのか、逃げ出すことができないようであった。ふと自分も同じように手足を縄で縛られているのに気づいた。叫び声をあげようとしたが、口にも猿ぐつわをはめられていたと見えて、うーうーと唸るばかりで、声にならなかった。

 唸り声に気づいたのか、仮面をつけた六人がこちらを見た。そして何やら、六人の間でぶつぶつと言い合うのが聞こえた。

 すると、猿の仮面を被ったやつが纏っていたローブを脱ぎ、こともあろうかズボンまでずり下ろし始めた。そしてそそり立ったペニスを丸出しにして、テーブルの上に横たわった子どもの顔に近づけた。その子どもも猿ぐつわを嵌められていて声を出すことはできないようだったが、頭を振って必死に抵抗した。それを見ていた他のやつらが互いに何か言っていた。

「毎度毎度、しょうがねえやつだ。あれで僧侶だっていうんだから呆れちまう」

「こんなことが上にばれたら、大変なことになるぞ」

「なに、どこも同じようなものさ。噂を聞きつけた奴らがどんどん加入しているらしいからな。だいたい、上のやつらはもっと楽しんでるって噂だぞ」

「なんだか、俺もむずむずしてきたわ」

「おいお前は官吏だろうが。ったく、しょうがねえやろうだな。こんなやつが国を動かしているとは、この国も終わりだな」

「俺に賄賂おくって、商売敵に濡れ衣きせて絞首台に送った極悪商人がよく言うわ」

「おいお前! それは二人だけの秘密じゃねえか!」

「心配するなって。ここにいる奴らは、みんな同じように脛に傷をもってる奴らばかりだ。この会の中でのことを漏らしたら、結局は自分に跳ね返ってくる。漏れる心配なんかねえって。それより、あっちにいるガキの頭を押さえておいてくれ、くれぐれも噛みつかないようにさせろよ。大事なペニスを食いちぎられたらたまらんからな」

 豚の仮面をつけた男がそう言うと、犬の仮面をつけた男がしょうがねえなと言って、近づいてきた。そして、「おいガキ、こいつがお前にペニスをしゃぶって欲しいとよ。だが、決して歯を立てるなよ! 歯を立てたら即座に殺すからな。分かったか」そう言って、猿ぐつわを外され、頭をがっしりと抑えられた。

 頭を動かすこともできず目の前の光景を見るしかなかった。豚の仮面をつけた男がズボンをずり下ろしていた。そして、そそり立ったペニスを見せつけるようにして、こっちに近づいてきた。必死になってもがいたが、犬の仮面をつけた男に思いっきり殴られた。気を失いかけたが嫌な臭いが近づいてくるのを感じた。朦朧とした目を開けると、目の前には豚の男が自分のペニスを握り、顔にくつけようとしていた。恐怖と嫌悪感で吐き気がした。思いっきり頭をのけぞった。

 その時だった。何か異様な声がした。

 何事かと仮面の男たちも後ろを振り返っていたが、そこには信じられないものがいた。なんと、繋がれていたはずの子どもがテーブルの上に立っていた。そして、その子は誰かから奪い取ったのか、龍の仮面をつけて、手には剣を持っていた。そしてその龍の仮面をつけた子どもはペニスを晒して、突っ立っていた猿の仮面の頭を一閃した。猿の仮面をつけた頭が胴体から離れた。龍の仮面の子はそれだけでは飽き足らないと見えて、今度は、その男のペニスを切り裂き、剣の先に張り付いた見るもおぞましい残骸を投げつけた。見る影もないペニスの残骸が壁にひっついた。

 残った男たちは、ようやく今どういう状況にあるか理解したようで、悲鳴ともつかぬ妙な叫び声をあげた。だが、その奇声は龍の仮面の子の心に火をつけたようだった。龍の仮面の子はにやりと笑うと、血に染まった剣をぺろりとなめた。

 

 

 そして、虐殺が始まった。
 テーブル周りにいた三人は屠畜される豚のように、手を切られ、足を切られ、腸を引き出された。肉がそぎ落とされ、目を繰りぬかれた。舌をつまみ出されてちょん切られた。心臓、肝臓、すい臓、肺とまるで解剖のように抉り出された。仮面の男たちは生きながら切り刻まれていた。うめき声が部屋中に響いたが、その子はまるでワルツを聞いているかのように乱舞し、男たちを切り刻んでいった。その様子をガタガタと震えてみていた犬の仮面の男は、急にわあっと叫んで、腰に差していた剣で、その子どもに襲い掛かっていった。だがなんの意味もなかった。龍の仮面の子は犬の仮面が振り下ろした剣をダンスを踊るようにあっさり交わし、そしてすかさず犬の仮面の男の背後に回り、その首に剣をあてた。

「……た、た、頼む……い、い、命……」

 冷たい剣を首筋にあてられた男は口をがくがく震わせながら、ようやく言葉を発したが、その言葉を最後まで言うことはできなかった。犬の仮面の男の首はごろんと床に転がっていた。

 龍の仮面の子は、その頭を何度も何度も剣で突き刺し、しまいには、ボールのように思いっきり蹴ったぐった。その頭は、部屋の反対側にふっとんでいき、ちょうど置いてあった大きな花瓶の上にちょこんと乗った。それを見た龍の仮面の子は、きゃっきゃっと笑い興じた。

 部屋にはもう、その龍の仮面の子と下半身素っ裸でペニスをぶら下げた豚の仮面をつけた男だけしかのこっていなかった。豚の仮面の男はそんな無様な格好をしているというのに、龍の仮面の子の前に膝まづいて、呆けたような笑いを浮かべた。龍の仮面の子は、それを見ると、その男の目の前に剣を突き出した。豚の仮面の男はすかさず仮面を取って、まるで龍の仮面の子に忠誠を誓うようにその剣先をべろでなめ始めた。そこにいたのは、ただの禿げあがった太った中年の男だった。その禿げあがった太った中年の男が、剣先をべろで綺麗に舐めているのを見ていた龍の仮面の子は、今度はその剣を男の頭の上に乗せた。男は救われたと思い、まるでそこに神を前にしているように真摯な面持ちで手を合せた。その瞬間だった。その男の頭は、ものの見事に真っ二つになっていた。

 龍の仮面の子は返り血に染まって、全身真っ赤だった。龍の仮面の子がこちらに近づいてきた。そして目の前に立った。あまりの恐怖に声もでなかった。だが、龍の仮面の子は、こちらをじっと見つめていたが命を奪うことはせず、逆に縄を切ってくれた。

 そして、まるで唄うようにリバイアサン、リバイアサンと繰り返し言った。そして、その龍の仮面の子はつけた仮面を外した。その顔をみた瞬間、全てが暗くなった。

 

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