『SEX』を公開して、曲がりながりにも、月間一位という勲章を得ることになった僕は自信がついてきました。
自分の書く物語は見てもらえるんだ、それなりに評価してもらえるんだという自信でした。
それは、もう小説を書くのなんかやめようかと思っていた自分にとっては物凄く大きな変化でした。
そしてもう一つ、作品を書くことに対して、それほど構えることがなくなりました。
最初の頃は、最初から最後まで書ききってから出さないと、それでもここが違うんじゃないか、この表現でいいだろうかと、ずっと悩んだものでした。
ところが、そんな作品よりも一日や二日で書いた作品の方が見てもらえた。高い評価をもらった。それは僕の意識を大きく変えたんです。
WEB小説なんて、何も完璧にしてから投稿する必要なんてない。誤字だって直せる、表現だって手直しできる。まずは書く。そして、ある程度納得がいったらまずは投稿してみよう。
そういう風に考えるようになりました。
そして、僕は新たな作品に取りかかったのです。
それは、『42.195キロ』というヒューマンドラマでした。
やはり『SEX』はエロイ作品であり、なんとなくそれが僕の代名詞になるのが嫌だったのと、もう一つ、終わりまで書ききっていない状態で投稿してみたいという欲求が高まってきたのです。
テーマと、おおざっぱなプロットだけ決めて、後は、その日その日の勢いで書いていく。
まさにWEB小説が求めるライブ感を出してみたいと思いました。
フルマラソンを走ったことがある僕にとっては、主人公の苦しさや辛さは身に染みて分かっており、それは非常に書きやすく、まさに疾走する感じで毎日書き続け、合計7話書いたところで終わりになりました。
最初は手探りで書いていったのですが、途中から、どんどん筆が加速していきました。
途中のエピソードでは、自分で書いておきながら、目頭が熱くなってきて大変でした。最後は、まるで自分が走っているような、目の前を主人公が走っているような感覚に襲われました。
コメントに励まされて書く、読者の声に押されて書く、主人公に追いつこうとして筆を走らせる、ライブで書くとはこういうことか、主人公が勝手に動き出すとはこういうことかというのを初めて体験させてもらいました。
この作品も高い評価をいただきました。今日数えてみたら、55人の方から星(★)をいただき、そのうち、21人の方がおすすめレビューを書いてくれました。
これは僕の作品の中でも断トツのレビュー率です。
その中では、感動しました、涙があふれてきました、素晴らしい作品でした、星(★)を100個は贈りたいなど、本当に身に余る評価をいただいたのでした。
こうして、僕はまた一つ新たな境地と新たな読者、新たな楽しみ方を知ったのでした。
皆さんは、書き上げてから投稿するんでしょうか。
まあ、少なくても眼鼻は付けてから投稿したいですよね。途中で書けなくなって(そういうのエタるって言うんですね)、放棄するのはかっこ悪いですしね。
でも、ある程度フォロワーの方が増えてきたら、ライブ感覚で書くのもいいと思います。
読者の方に背中を押されて書く。
もしかしたら、WEB小説の一番いいところは、読者との距離が近いということかもしれません。
家に引きこもって、ああでもない、こうでもないと推敲し、できた作品を期待に胸膨らませて公募に送る。
でも大抵はなんの講評すらなく、自分が落ちたことだけを知る。
ところがWEB小説は、少なくても読んでもらってる実感がある。PVも見えるし、応援ももらえる。そして何より読者の声が聞こえる。
その声が結構大きいんですよね。
今では、その声で作品の方向性が変わることが僕の中ではしょっちゅうあります。
読者に媚びるわけではないですが、やはり読者がその作品に何を求めているのかをリアルに知ることで、その作品の方向性を微調整することができます。それは投稿サイトにしかできない、素晴らしい特徴だと思います。
そして、何よりもカクヨムは、そういう声が一番聞こえるサイトだと思います。僕はこの一点だけで、カクヨムは他のサイトに勝ると思っています。
確かにな〇うでは、カクヨムよりPVはもらえました。でも、それだけなんですよね。数字だけ。完結したときにいくつかコメントはもらいましたが、面白かったとかそんな程度。そのほかのサイトはさらになんにもなし。
僕がカクヨムを選んだ理由は、まさにこの点にあります。
読者との距離が近い。
それは、作者にとって一番大事で、モチベーションが上がる点じゃないでしょうか。
最近では、もちろん星(★)はうれしいんですが、コメントもらうと本当にうれしい。ああ、この人は、しっかり読んでくれたんだと実感します。
皆さん、いかがですか?
やっぱり僕と同じ思いを持っていませんか? もし、そうなら、ライブで書く方が、凄く面白いですよ!
でも一つ、ご注意を。
期待に応えようとすると本当に自分がしんどくなるので、マイペースは忘れずに。それで、僕は一度ならず二度も、もうやめよう! と思ってしまったのですから……
※ このエッセイは、かつて僕がカクヨムという投稿サイトで活動していた際に書いたものを掲載していますので、現在の実態とそぐわないことがあるかもしれませんが、その点についてはご容赦ください。