「おはようございます!」
「おはよう――白鳥君! きみ、その姿……きみは完全に私の好みを理解したようだね――ダークブラウンのミニスカートに白いタートルネックのセーター。細すぎず太すぎない足をこの上なくセクシーに見せるパンストを履いて……白鳥君、グンバツだ! つまり、抜群だ! エロさが臭い立つようだ。しかも、君とこんな六畳にも満たない狭い部屋で、今日の晩まであと9時間も二人で一緒に語り合うなんて……この文章を見ただけで、男性の過半数は下半身への血液流入量が一気に増加したと思うよ」
「か、勘違いしないでください、好きでこんなかっこをしているんじゃありません! 博士が、こういうかっこをしてこいと言うから、しょうがなく……」
「いや、最後まで言わなくていい――そうか、君がこの研究室に来た理由が少しだけ分かった気がするよ――つまり、君も本当はエロいんだな」
「そんなこと!……そんなことありません……」
「隠さなくてもいい。女性は常に抑圧されてきた。男はエロさがさも勲章のように扱われるが、女性はエロいなどと噂されるだけで、人格を否定されてしまうことさえある。ビッチだ、ヤリマンだと、まるで同じ人間とは思えないような扱われ方だ。だが当然、女性にだって性欲はある。白鳥君、君は今、彼氏はいるのかね」
「あの……半年くらい前に分かれて……」
「そうか、ならばなおさらだ。そろそろ禁断症状が出てくるころだ、君は毎夜毎夜、体の中から突き上げてくるエロい衝動に耐えかねているのだろう。昔の彼とのSEXを思い返しながら、悶々とし、体は火照り、自然と手が乳房をまさぐり、もう片方の手は、秘部に伸びる、白鳥君、君のその白魚のような指は、昨晩も君の体を慰めていたんだね」
「……博士、それこそ完全なエロ小説の世界です」
「白鳥君、実は私はここでもエロ表現の限度を測っているのだよ」
「えっ」
「先ほど私が言ったことは、かなりエロい表現を含んでいる。だが基本的には自慰行為だ。しかも慎重に露骨な単語は避けている。もしかりに、これでカクヨムからアウトがくれば、エロ表現の限度はこのラインということになる。定理の発見とは条件を設定して、何度も実験を繰り返すことで、確からしさを追求していくということなのだよ」
「これを、何度も繰り返すんですか……」
「あたりまえじゃないか、カクヨムの担当者が、日々、数百、数千とあがってくる新作の中身を全てチェックすることなどできるはずもない。かといって、単語で規制をかけているとは思えない。ならば読者の通報に基づいて、審査していることになる。実際、そういう通報の仕組みをとっているしな。だから我々は、常にある一定の条件の下での試行を幾度となく行い、段階を踏んで検証していかなければならないのだよ」
「博士のいうことを聞いていると、なぜか納得させられてしまいます」
「理解してくれたのなら結構だ。では改めて聞こう。君は自慰行為はするかね」
「そんなことしません!」
「本当かね」
「……そりゃ、たまには胸を触ったりすることくらいはありますが……」
「体が火照り熱くなるんだね!」
「……たまには、そういう時も……」
「それはベッドかい、それともお風呂かい」
「……ええっ、あの……そんなことも答えなくちゃいけないんですか」
「そうだよ。どっちなんだい、君が上気した顔で、その体をまさぐるのは」
「……あの、えっと……ちょっと、博士! 博士の股間、いつのまにかパンパンに膨らんでいるじゃないですか!」
「いや、これは違う……その……男に特有の朝立ちだ」
「信じられない! もうやだ!!!」
「待ってくれ、白鳥君! 戻ってくるんだ! 白鳥君!!! ……行ってしまった……まだ、一万字にも達していないと言うのに。いったい、どうすればいいんだ。カクヨムコンの締め切りまで、あと2か月しかないというのに……」